貸借対照表の極意
4-7.融資したくない貸借対照表
金融機関が会社に資金を融資する際には、貸借対照表の自己資本を重視します。もしも自己資本が少なければ会社の経営は安定せず、倒産する可能性が高いので、金融機関も融資を控えるようになります。
会社は自社の収益で足りない分の資金を、他人資本である銀行からの借入金により調達して経営を行っています。特に今までは、銀行も会社の経営状態によらず、簡単に融資を行なった、銀行依存型の経営が行われることが多かったのです。
しかし、バブル経済が崩壊し、不良債権が増加して金融システム不安が広がると銀行も安易に融資に応じなくなり、融資を求める会社に対して貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の提出を求めることが一般的となりました。
それでは銀行は決算書のどこをみて、融資を行ってもいい会社かどうか判断しているのでしょうか。
まず、銀行がみるのは貸借対照表の純資産、つまり自己資本がどの程度充実しているかであります。これは自己資本比率を算出すれば一目瞭然となります。自己資本比率が極めて小さい会社や、赤字が累積して利益剰余金がマイナスとなり、その結果、自己資本比率がマイナスの値となっている会社では、他人資本に頼った不安定な経営を行わざるをえず、倒産する危険が高いのです。資金繰りが厳しくて、さらに借り入れないと経営が成立しない状態の会社に借入金を返済する余裕はなく、銀行が融資を控えるのは当然でしょう。
さらに最近ではキャッシュフロー計算書が注目されるようになっています。これは金融機関が不良債権の自己査定を行ったとき、それを算定する金融庁がキャッシュフロー計算書をチェックするからです。キャッシュフロー計算書において、自由に使えるお金、すなわちフリーキャッシュフローが多い会社であれば、借入金の返済が可能です。銀行もフリーキャッシュフローの多い会社であれば信用して融資を行える。今のところ、中小企業に関してはフリーキャッシュフローの作成・開示は義務づけられていませんが、実際には銀行から融資を受ける際に提出を求められることが一般的になってきています。
- ・仮払金、貸付金がない
- ・附属明細書が詳細に書いてある
- ・土地・投資有価証券に含み損がない
- ・会社は累積欠損でも個人に資金残がある
- ・売掛金・受取手形の残が妥当
- ・たな卸資産の金額が妥当
- ・当行の貸している残高が合っている
- ・会社もしくは社長の土地の登記簿謄本の乙区に担保余力がある
- ・税金を払っている企業
- ・前受金・前受収受の工夫をしている(プリペイドカード・回数券・年会費等)
- ・自己資本比率が高い(優良企業の目安=53%)
- ・仮払金、貸付金が多い
- ・附属明細書が不十分
- ・土地・投資有価証券に大きな含み損がある
- ・会社は債務超過で、個人に資金残もない
- ・売掛金が増加
- ・たな卸資産が増加
- ・当行の貸している残高と合っていない
- ・会社もしくは社長の土地の登記簿謄本の乙区にあまり知られていない金融機関の名前がある
- ・残高証明がついていない
- ・税金を払っていない企業
- ・前受金・前受収受の存在なし
- ・自己資本比率がマイナスもしくは低い
(赤字企業の平均=-4%)
(黒字企業の平均=25%)