貸借対照表の極意
4-8.3つの指標をアップさせるのが仕事
貸借対照表の自己資本比率は潰れない指標、損益計算書の経営安全率は儲かる指標、キャッシュフロー計算書の自由資金比率©は資金繰りがよくなる指標です。3つの指標は互いに連動しています。
貸借対照表では〈自己資本÷総資本(自己資本+他人資本)〉で導かれる「自己資本比率」に注目します。これが高いほど経営は安定し、倒産しにくい会社となります。
損益計算書で注目するのは〈経常利益÷限界利益(売上ー変動費)〉で導かれる「経営安全率」。これは「売上が○%落ちて(上がると)損益トントン」という数値で、高いほど儲かっている会社です。
キャッシュフロー計算書では〈フリーキャッシュフロー÷利益剰余金増加額〉で導かれる「自由資金比率©」に注目します。これは利益が現金として残る割合であり、高いほど資金繰りが安定します。
これらの指標が連動しています。経営安全率が高まると利益が増え、税引後純利益の蓄積である利益剰余金、すなわち自己資本が増加するから自己資本比率が高まります。自由資金比率©が高まるのは売上債権やたな卸資産、固定資産がコントロールされ資産、つまり総資本が減少する状態で、自己資本比率が高ります。
結局、経営安全率と自由資金比率©が改善されると自己資本比率が上昇し、経営が安定するのです。ですから、指標を3つもみるのが面倒なら、最も簡単に算出できる自己資本比率にのみ着目すればよいのです。
これらの指標を改善する方法は5つあります。損益計算書の限界利益を高め、固定費をコントロールします。すると、経常利益〈限界利益-固定費〉が上がり、経営安全率が高まります。さらにキャッシュフロー計算において固定資産のコントロール、売上債権のコントロール、在庫のコントロールを行えばフリーキャッシュフローが増え、自由資金比率©が高まります。こうして2つの指標が改善された結果として自己資本率が高まり、最も大切な「倒産しにくい」会社となるのです。これらの指標の改善には膨大な時間がかかるとはいえません。効率よく5つのポイントを改善すれば、次の決算期には目に見えて自己資本比率が上がってくるはずです。